コーヒーミル (coffee mill) は、焙煎されたコーヒー豆を粉砕するための器具のうち、家庭用のものを指す名称で、業務用はグラインダーと呼ばれることが多いです。コーヒー豆は、生豆を焙煎したあと粉の状態にしないと抽出することが出来ないため、コーヒー豆からコーヒーを抽出するまでの過程で必須な器具となります。
日本の家庭ではインスタントコーヒーに代わり、レギュラー・コーヒーが普及してきたが、まだまだその粉を購入している人が多いです。しかし粉だと、チャックつきの袋に入っていても開封後2、3日で湿気を帯びたり香りが飛んだりしてしまうので、豆で購入して使うごとにコーヒーミルで挽けば、より薫り高いコーヒーを愉しむことが出来ます。
コーヒーミルの駆動方式による種類
- 手動式コーヒーミル
- ホッパー(漏斗状の投入口)から落ち込んできたコーヒー豆を、固定された外刃と回転する内刃で噛み込み粉砕する。その原理はひき臼に似る。 安価なものでは日本円で千円台から在り、家庭で気軽に「挽きたて」のコーヒーを愉しめる。しかし量が多いときは面倒であり、また、浅煎りの豆やコスタリカの豆のように、堅い豆は挽きにくいこともある。
- 電動式コーヒーミル
- 家庭用の小型のものは、蓋で密閉できる容器の中でブレード(刃)が高速回転し、コーヒー豆に激しく衝突することでコーヒー豆を粉砕する。手動式ミルとは仕組みが異なり、手動式ミルの駆動軸を単純に電動化したものではない。 かつては使用時の発熱で香りが飛ぶと言われたが、現在では改良された。手動式よりも粉粒が揃っており、毎回の作動時間(すなわち挽き具合、粉粒の粗さ)を揃えることも容易である。このメリットは、挽き具合が味に大きく影響するなかで定量的にコーヒーを淹れることに寄与する。 電動式コーヒーミルを内蔵したミル付きコーヒーメーカーも多い。
コーヒーミルの粉砕方式による種類
- 擂り臼式ミル
- のこぎり(凹凸)状の表面を備えた鋳鉄やセラミックスの固定歯(刃)と回転歯(刃)を備え、手動または電動で回転する。回転歯(刃)は円盤または円錐または円筒状をなす。 コーヒー豆は2つの歯(刃)の凹凸の間で回転を与えられながら圧縮・打撃・剪断されて細かくなる。
- 低回転しか与えられず放熱性に優れた鋳鉄製手動式の場合では問題とならないが、電動式では高速で回転するために粉砕された粉には高温が発生し、コーヒーを黒化変色させ脂質の加熱変化に起因するオフフレーバー(香り成分の逸失。味も香りも抜けてしまい、ただ苦味だけを感じる)が発生しやすい。また歯(刃)の表面温度は瞬間的に鉄の融点を越えることがあり、鋳鉄製歯(刃)の場合、歯(刃)の寿命が長持ちしない。
- 機種にもよるが、粒子度合いがそろいにくいものがある。
- カッティングミル
- カッティングミルは、幾つもの刃が付いた2枚の円盤を向かい合わせて片方を回転させ、刃と刃の間で砕くことをその原理としている。
- 円盤の間隔差により、粒子度合いの調整が可能である。極端な粗挽きには不向きである。この方式のミルは一般的には業務用に用いられるが、家庭用の小型電動式や手動式のものもある。
- 相対的に熱発生が抑えられる構造である。粒子度合いもそろえやすい反面、微粉末発生が多くなる。磨耗により急激に刃の部分やコーヒーに性能、品質劣化を引き起こす場合もある。定期的なメンテナンス(刃の隙間の調整や清掃)が必要である。[2]小石等が混じる粗悪なコーヒー豆を挽くと、致命的なダメージを被る場合がある。
- 大型工業用破砕機
- 原理的にはカッティングミルに類似する。1914年シカゴのB.F.ガンプ(Gump Inc)社のジール・リーページ(LePage)が開発した。
- 一対のカッティングロールは一つのロールを横向きカット溝、もう一方のロールには縦向きにカット溝を備えている。左右ロールの回転速度を変えているのも特徴の一つである。ロールの溝はロール間隔差の圧力でコーヒー豆を噛み砕く(破砕する)。生産能力が高く、粒子も擂り潰されることなく均一で、断面は鋭角に仕上がる。ロール式構造により発熱が抑えられ(出口の粉温度は33℃程度)、微粉が少なく、豆の表面から油脂分が染み出しを防ぐことも可能となった。
- ロールを何段階かに分けて粉砕粒度の高精度化と生産性の効率化に結びつくことができた。
- この方式の機械の中には、粉温度を上げないために、刃の周辺を水冷循環で冷却する装置を組み込んだものがある。
- ミキサーミル
- フードプロセッサーを焙煎コーヒー豆粉砕に応用した機械。しかし日本国内でのフードプロセッサーの市場規模は小さく、大手メーカーではパナソニック1社のみの生産なのに対し、このタイプのコーヒーミルは数社から出ている。
- 家庭用小型電動タイプのものに限られる。
- 焙煎豆を入れるコンテナー内にプロペラをモーター駆動で高速回転させて豆を砕く。粒子度合いは回転時間により調整する。時間が長くなるほど細挽き傾向となる。
- 構造が簡単で安価であり、小石等が混じる粗悪なコーヒー豆に対しても丈夫である。しかし粒子度合いが極めて不ぞろいになりやすく、熱の発生も大きく、微粉が多いのが難点である。
- なお発熱の大きさはフードプロセッサーでも共通した問題である。